分裂に向かうイラク

02 24, 2016 | Tag,国際情勢
Iraqi fighters training in Basra

ニューヨークタイムズに寄せられたコラム"Ways Iraq Could Break Up"を紹介しようと思う。米軍が撤退したイラクの現状。寄稿者は元海軍大佐、トム・グリーンウッド氏で、米軍撤退後、混乱の続くイラクが分裂に向かっているというお話。国内の主な勢力は、シーア派中心のイラク中央政府、スンニー派国民、スンニー派のISIS、クルド人自治区(イラク領クルディスタン)、そして南部のシーア派。南部のシーア派とは、本文の中では触れられていないがマフディー軍のことかなという気がする。氏の論調は軍事介入せよというもので、わたしとしては必ずしも賛同しかねるのだが、イラクが分裂に向かっているという点は興味深かったので紹介しようとおもう。以下は翻訳。

分裂に向かうイラク

イラクは事実上の分裂状態にあるといえる。この分裂の背後には武力のみならず、宗派間の不和や腐敗した中央政治がある。アメリカはもちろんイラクの分裂を望んではいないが、現状は各勢力をなだめて時間を稼ぐことしか出来ていない。順を追って説明しよう。

まず一番の問題はISIS。彼らはかつて支配していたイラクの都市を武力によって奪還しようとしている。彼らにしてみればこれは、彼らの言うイスラム帝国を維持するため、そしてジハード主義運動の盟主としてのイメージを保つために必要なことだ。ISISに対抗するためにはイラク軍とスンニー派部族の民兵組織はアメリカの協力なサポートが是非とも必要だ。これには空爆支援はもちろん、地上部隊の投入も含まれる。

第二にシーア派の主導するイラク政府によるスンニー派排除の政策が、スンニー派の不信感を育んでいる。少なからざるスンニー派組織がイラク中央政府の腐敗をISIS以上の脅威として捉えている。今でさえスンニー派組織の中には過激派組織の側についている者もいると考えられている。スンニー派をISISとの戦いに参加させるためには、アメリカはハイダル・アル=アバーディ首相に対して、スンニー派に与えられる自治権の拡大と、スンニー派に対する政権ポストの開放を提言するべきだ。さらにイラク政府はスンニー派の民兵の武装を支援し、彼らに自分達のコミュニティを守らせるべきだ。

そしてクルド人の問題。彼らは自治区を獲得ており、イラク北部を守るためにISISとの戦いに血を流している。クルド人はイラク政府に対し財政と原油資源の分配について譲歩を期待している。つまり彼らはISISとの戦いでの正当でない負担を強いられていると感じている。アバーディ政権としてはこういったクルド人に対する譲歩は、共にクルド人問題を抱えるトルコとイランの顔色を伺う必要がある。さらにイランはシーア派国家であり、アバーディの政治基盤にも影響力を持っている。それでもアメリカは全ての勢力に対して、ISISの排除は関係各国や各コミュニティに共通の利害であると働きかけていく必要がある。

最後に、南部の都市バスラの政情不安はシーア派コミュニティにも亀裂を生んでいる。南部のシーア派コミュニティも自治権の獲得を模索している。クルド人と同様、彼らには南部の原油資源の分配に不満がある。

結局はイラク政府が、クルド人、スンニー派、シーア派間での石油資源の分配をいかに公正に行うかという点が鍵を握る。この政府の対応次第でこのイラクの分裂問題はきれいに決着するかもしれないし、流血やイランの介入という事態に帰結するかもしれない。
TOM GREENWOOD

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元バックパッカーの引きこもり、世界に飛び出す引きこもり。当初は役立つ情報を、と思っていたんだけど自分の興味しか書けないね。

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