「進化論は否定されている」という叙述トリックと中国の経済成長

06 20, 2017 | Tag,雑記,生物,宗教

画像: https://ja.wikipedia.org/wiki/


「進化論って否定されているらしいね」って割とシリアスに言っている人がいて驚く。特に宗教にかぶれてるわけでもないような人が言うので、どこからその情報を仕入れるのか気になる。今回はこれを調べてみようと思う。ちなみにヒンドゥー教にかぶれているのはむしろわたしだ。「進化論は否定されているらしいね」の裏には叙述トリックと伝言ゲームと古生物学の発展がある。

進化論は否定されている。本当に創造神話を信じている人がこれを言っているのならばリチャード・ドーキンス先生におまかせするとして、宗教的背景を持たない人がこれを言っていた場合、又聞きを無学が故に脳内変換をしてしまっている可能性が高いのではないかと思う。



ダーウィンの進化論は誤りが指摘されている

これは正しい。ダーウィンの進化論とは「種の起原」であり、「自然選択説(自然淘汰説)」という仮説。発表されたのは1859年。メンデルの法則が1865年。DNAの働きが確認されたのが1952年。ダーウィンの仮説に間違いが無かったとすればその方が驚きだ。「ダーウィンの進化論は誤りが指摘されている」という一言を「進化論が否定されている」と脳内変換してしまうことは十分にあり得そうだ。

「進化論」というのは言ってみれば学問の一分野に過ぎない。進化生物学である。つまりダーウィンの「自然選択説」以外にも仮説が存在する。そして多くは自然選択説を下敷きにしている。他にどんな仮説があるかというと本筋から外れるので、下の方に別項を用意する。ではダーウィンの何が否定されているのか

ダーウィンは「変異はどこから来るか」を十分に説明していない。一番の間違いはダーウィンの提唱したパンゲン説という仮説の部分と、自然選択が働く範囲。

パンゲン説はおおむね否定されている - ダーウィンはパンゲン説を支持していた。これは用不用説(ラマルキズム)のようなもの。獲得した形質が遺伝するという考え。このラマルキズムについては下の方にも説明する。

ダーウィンの理論では動物の利他的行動が説明できない - 自然選択が働く範囲の話。種を残そうとするのか、群れを残そうとするのか、それとも個体を残すのか。例えば働き蜂の多くが子孫を残さないことに対する説明ができない。後に「遺伝子選択説」により説明される。


キリンの中間種は見つかっていない

これは正しい。しかしキリンの中間種が見つかっていないことを根拠に進化を否定するロジックは古いと言わざるを得ない。10年、20年前ならばまだ説得力があったが、今これを口にしてしまう人は大して生物進化に興味がないけど進化論が気に入らないと公言してしまっているようなものだ。学問的議論をする気がないと言っているようなものだ。

確かにキリンの中間種はみつかっていないがクジラの中間種が見つかっている。以下に紹介しよう。これらは化石を見ると徐々に足がなくなっていく様がわかる。多くがパキスタンで見つかっている。西暦は発見。

1979年 - パキケトゥス、陸上生物。
1994年 - アンブロケトゥス、水陸両生の原始的クジラ類。
1975年 - レミングトノケトゥス、淡水に依存していなかったことがわかっている
1990年代 - プロトケトゥス、世界的な分布
1840年 - バシロサウルス

もう一つ。恐竜と鳥の中間種がどんどん見つかっている。このあたりの話は普通に新聞を読んでいれば目にしているはず。これらの発見は中国の政情が安定したことによると言っていい。中国で続々と見つかっている。最初にシノサウロプテリクスに羽毛が確認されたのが1995年である。

1991年 - エオラプトル、最も原始的な恐竜。恐竜以前のものとして枠から外されることもある
1922年 - ヴェロキラプトル。1998年に羽毛が生えていたことが確認される。2007年には飛羽瘤(quill knob)が見つかる。これは風切羽根を支える構造で、骨に残る。
1984年年 - モノロフォサウルス
1999年 - ミクロラプトル、滑空すると考えられている。1億2000万年前
1877年 - アーケオプテリクス(始祖鳥)、現在見つかっている最古の鳥。1億5000万年前。ドイツ。しかし歯を持っている。

1990年代以降に埋まったリンクがかなりあるのがわかると思う。10年、20年前に書かれた本を読んだ人であれば、「中間種が見つかっていないので進化が起こったことを示す明確な証拠は存在しない」と言い切ってしまいたくなる気持ちはわからなくもない。しかし、そう言い切るためにはそれなりの理論武装が必要だろう。

例えば鳥の例はリンクが埋まりきっているとはいいがたい。まだ鳥ではないミクロラプトルより、最古の鳥である始祖鳥の方が古い。さらに始祖鳥だけドイツだし、鳥に歯がなくなる過程がまだ埋まっていない。「中間種が見つかっていない」と言い切りたいのならばこれくらいの反論はしてしかるべきだろう。それでも無視できない連続性は残る、と多くの人は考えるだろう。

キリンの中間種を見せてください、というのは進化論否定論者の常套句である。しかし普遍である聖書と違い科学は進んだり戻ったりするものなのだ。ちなみに、ダーウィンの進化論にこだわらなければ中間種の存在は進化論の証明に必ずしも必要ない。

あの山中伸弥教授も進化論を否定しているらしいよ

これはこちら(外部のブログ)を読んでいただくのがいい。山中氏と益川氏の対談でこの話が出たというものだ。文脈を無視して誤解を与える形にぶった切ったものが拡散してしまった情報のように思われる。以下、上記ブログから抜粋。

山中氏:そのうち、ダーウィンの「進化論」は間違いだった、ということになるかもしれません。

益川氏:ダーウィンの「進化論」では、個体に生じるランダムな突然変異によって生物は進化した、とされていますが、京都学派の文化人類学者、今西錦司先生は、「種は進化に対して主体性を持っている」という説を展開しました。つまり、生物は「変わろう」と思った時に変わった、主体的に変わったのだというのです。まだダーウィンの「進化論」は実証されていませんから、まだどちらが勝つかわからない。

ほらいった通りじゃないか。"ダーウィンの「進化論」は間違いだった"、これは自然選択説が間違いかもしれないという意味だ。では他にどんな進化論があるのか見てみよう。


いろんな創造論、あるいは進化論


生物は普遍だよ派 - 発生が説明できない。

普遍じゃないけど神様が進化させているよ派 - インテリジェント・デザイン論。平たく言えば創造論者の譲歩である。ちなみに現ローマ法王の見解は「神は、自然の法則に従って進化するように生物を創造した」。しかし神様の発生が「目の進化」以上に複雑。

「進化論」に関してある程度は納得してるけど、人間だけは特殊な気がしてならないよ派 - ある意味普通。生物学者だってきっと、これは遺伝子に刻まれた行動だ、とわかっていても「後から生まれたヒナを捨てる鳥って残酷だな」って思ってる。

突然変異が直接新種を生むよ派 - ユーゴー・ド・フリースの突然変異説や跳躍進化説。植物の世界では無きにしも非ず。極端に言えば爬虫類の卵から突然鳥が生まれる説。眼のような複雑な器官は中間型は役に立たないために漸進的な進化によって形成されるはずが無い、というのが根拠。実際には人間よりも原始的な眼を持つ生物は多く、支持されているとは言いがたい。明るいか暗いかがわかるだけの器官でも十分に役に立つ。湾曲して影ができれば方向がわかるし、球に近づくほど精巧なピンホールカメラになる。

その生物の求める方向へ進化するよ派 - 用不用説(ラマルキズム)。頑張った人の能力が遺伝するよ。空を飛びたいと思う気持ちが大事だよ。ロマンチスト。

やっぱり生物自身が進化の方向を決めているはずだよ。でも突然変異は遺伝的多様性を増加させ、進化の原因になるよ派 - ネオ・ラマルキズム(トーマス・ハント・モーガン)。ラマルキズムでは説明しきれないので「突然変異」をうけいれた。

ラマルキズムの流れはダーウィンとは別のところから生まれている。頑張った人が報われるって素敵だし、とくにソヴィエト連邦のような国で極端に擁護された歴史がある。しかし分子生物学の発展以降支持されているとはいいがたい。生物の進化にさほど興味を持っていない人は、「キリンは高いところの葉を食べるために首がながくなった。そしてこれがダーウィンの進化論だ」と考えている人もいるかもしれないが、これはラマルキズム。「自然選択説」は「生物が変化」するというお話ではなく、生物が淘汰させるというお話。

自然選択なんてそんなに起きないよ。遺伝子が生き残る理由はもっと偶然だよ派 - 中立進化説。ダーウィニズム、ネオ・ダーウィニズムでは選ばれるべき形質が自然によって必然的に選ばれるとするが、中立進化説ではそこに疑問を投げている。適応力のある形質が広がるのではなく、特に理由もなく広がった変異が何らかの原因、例えば環境の変化などで、適応力を持つ形質として発現する。中立進化説を体系化したのは木村資生という日本人で、日本人としては唯一ダーウィン・メダルを受賞している。

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元バックパッカーの引きこもり、世界に飛び出す引きこもり。当初は役立つ情報を、と思っていたんだけど自分の興味しか書けないね。

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